TikTok Shop(TikTokショップ)への参入を検討しているEC事業者の方にとって、メリット・デメリットをしっかり理解することは成功への近道です。日本では2025年6月30日にサービス開始したTikTok Shopですが、海外では既に驚異的な成長を見せています。2024年、アメリカでのGMV(流通取引総額)は90億ドル、インドネシアでは62億ドルを記録しました。
しかし「具体的なメリットやデメリットがわからず、出店すべきか判断に迷っている」という事業者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、TikTok Shop出店の具体的なメリット・デメリットを詳しく解説します。
TikTok Shop市場の可能性と基本機能

TikTok Shopとは、ByteDance社が運営するショート動画アプリ「TikTok」内で商品の販売・購入を行えるECサービスです。動画やライブ配信に商品リンクを設定でき、ユーザーはアプリ内で動画視聴から購入まで完結できます。
現在海外で実装されている主要機能は以下の通りです。
| 買い物カート付きショート動画 | ショート動画に商品購入ボタン付けし、ユーザーが動画内から決済できる機能 | 
| ライブコマース | ライブ配信画面に商品購入ボタンを表示できる機能で、配信者はユーザーとコミュニケーションを取りながら商品紹介できる機能 | 
| プロダクトショーケース | アカウントのプロフィールページ上に商品を表示し、そこから購入できる機能 | 
| アフィリエイトプログラム | TikTokクリエイターに商品プロモーションを依頼できる。クリエイターは商品の販売実績に応じて成功報酬を得られる仕組み | 
| ショップ広告 | ショップ広告には、Video Shopping Ads(動画ショッピング広告)、LIVE Shopping Ads(ライブショッピング広告)、Product Shopping Ads(商品ショッピング広告)、GMV Max広告、Live GMV Max広告の5種類があり、各ショップ広告ごとで商品を宣伝できます。 | 
成功への道筋:5つの大きなメリット

TikTok Shop出店により事業者が得られる利点は多岐にわたります。なにより大きなビジネスチャンスを提供してくれる点は最大の魅力といえるでしょう。主なメリットは以下の5つです。
- 新たな顧客層へのアプローチが可能
- アプリ内完結による離脱・カート落ち防止
- 低コストでの事業参入
- インフルエンサーによる商品拡散
- 実績に裏付けられた市場拡大の可能性
新たな顧客層へのアプローチが可能
日本国内の月間アクティブユーザー数は3,300万人以上を誇り、膨大なユーザーベースを活用できます。(出典:TikTok for business TikTok Academy for Brand Playbook vol.1 )既存ECサイトでリーチできなかった顧客層にアプローチできます。また、初期段階では競合セラーが相対的に少ないため顧客獲得単価も抑えられるでしょう。
TikTok Shopは「発見型購入」が特徴で、ユーザーが動画を楽しむ中で偶然出会った商品に興味を持ち、そのまま購入へ進めます。ユーザー自身も気づいていなかった潜在的なニーズを引き出しやすく、従来リーチできなかった顧客へのアプローチが可能になります。
アプリ内完結による離脱・カート落ち防止
ユーザーは気になる商品を見つけた際、TikTok Shopアプリ内で素早く購入手続きまで完了できます。外部サイトへの遷移による煩わしさや時間経過による購買意欲低下を防ぎやすい構造です。
アメリカのEC調査会社Baymard Instituteの調査では、多くのユーザーが「チェックアウトプロセスが長すぎる、複雑すぎる」ことを離脱・カート落ちの理由として挙げています。(出典:Baymard Institute Cart Abandonment Stats) TikTok Shopの簡単な購入プロセスは、離脱やカート落ち防止に繋がります。
低コストでの事業参入
TikTok Shopのアカウント開設は無料で、月額利用料金も発生しません。必要なコストは販売成立時の手数料のみで、日本での基本手数料は流通取引総額の7%です。アメリカでは約8%、東南アジアでは5〜10%となっており、各国で同程度の料率が設定されています。出典:VOGUE BUSINESS 出典:ECOMOBI
インフルエンサーによる商品拡散
アフィリエイトプログラムにより、多数のフォロワーを抱えるインフルエンサーによる商品プロモーションが実現できます。成功報酬型のため、販売が振るわなくても過度なコスト負担の心配がありません。
クリエイターのアフィリエイトプログラム登録にはフォロワー数1,000人以上が必要で、影響力のあるクリエイターのみに限定されます。また過去の違反行為についても審査が行われ、社会的信頼性の高いクリエイターのみがアフィリエイト権限を獲得できる仕組みとなっています。
実績に裏付けられた市場拡大の可能性
アメリカでのTikTok Shop年間GMV(流通取引総額)は90億ドルに達し、特にブラックフライデー期間中は11月29日の1日だけで1億ドルの売上を記録しました。これは前年同日の3倍にあたり、成長スピードの速さを物語っています。(出典:Tech Buzz China Insider) イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国や東南アジアでも成長が続いており、日本市場でも同様の成長が期待されます。
知っておくべきデメリットと対策方法

TikTok Shop出店には多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべきデメリットも存在します。成功するためには以下の2つのデメリットを十分に把握し、対策を講じることが重要です。
- 継続的なコンテンツ制作の負担
- 急激な注文増加への対応リスク
デメリット1:継続的なコンテンツ制作の負担
ユーザーの購買行動を促すには、魅力的な動画・配信コンテンツを定期的に発信し続ける必要があります。自社で制作する場合、コンテンツ制作の技術習得と継続的なリソース確保が欠かせません。また、撮影機材の準備や編集スキルの向上、トレンドに合わせたコンテンツ企画なども求められるでしょう。
TikTok Shopの日本サービス開始後は多数の事業者参入が予想され、膨大な数の動画やライブ配信が投稿されることになります。自社コンテンツが埋もれることなく、他社との差別化を図りながら多くのユーザーに拡散される質の高いコンテンツを継続して制作することが求められます。
解決策1:専門知識を持つ外部パートナーとの連携
アカウント運営・Shop運営・コンテンツ制作の支援サービスを提供する外部企業への依頼が有効な解決策となります。専門知識を持つパートナーに任せることで、質の高いコンテンツを安定的に制作できるだけでなく、TikTokのアルゴリズムやトレンドに対応した効果的な動画制作も期待できるでしょう。
デメリット2:急激な注文増加への対応
コンテンツや商品が話題となり販売数が急激に伸びた際の受注・物流対応体制が重要な課題となります。既存の受注システムとの連携不備により在庫数が確保できず売り越しが発生したり、配送遅延が生じたりするリスクがあります。海外ではFBT(Fulfilled by TikTok)というTikTokが出店者に代わって在庫管理、梱包、配送を行うサービスがあります。出品者が物流業務から解放されることで、コンテンツ制作に注力できるのです。しかし、残念ながら現時点では日本でのFBTの導入は未定となっています。
解決策2:システム連携とリソース配分の最適化
既存の受注システムとTikTok Shopとの連携テストを十分に行い、在庫管理システムの精度向上や配送業者との連携強化を図ることが重要です。アカウント運営やコンテンツ制作を外部に委託することで、事業者は在庫管理や物流体制の安定化、既存EC事業の拡充など、ほかの重要業務にリソースを集中できるようになります。結果として、事業全体の効率性の向上が可能になります。
TikTok Shop出店で成功しやすい事業者の条件
これまでに説明したメリットとデメリットを踏まえると、視覚的な魅力を効果的に伝えられる商品を扱う事業者がTikTok Shopで成功しやすいといえます。
相性の良い商品カテゴリー
以下のような商品を取り扱う事業者が出店に向いているといえます。
- 化粧品・コスメ
- アパレル
- 食品
- 調理器具
- 小型家電製品・ガジェット
コスメやアパレルは配信者が実際に使用・着用することで、雰囲気やテイスト、サイズ感を視覚的に伝えやすいでしょう。調理器具や食品は実際に調理する様子を配信することで魅力が伝わりやすくなります。ただし、生鮮食品および冷凍食品は、TikTok Shopのガイドラインにより一時的に販売対象外となっていますのでご注意ください。
小型家電や電子機器などコンパクトな商品もスマートフォンの画角に収まりやすく相性が良い商品です。特に課題解決型の商材はショート動画やライブコマースでエンタメ仕立てに商品ストーリーを伝えやすく、TikTok Shopでの販売に適しています。
効果が期待できる事業形態
写真と文字ベースのECでは商品の魅力が伝わりづらいと感じている事業者の方にとって、TikTok Shopは有効な選択肢となります。また、動画コンテンツによる商品説明に適した商品を扱っている事業者の方も、TikTok Shopへの出店を積極的に検討してみる価値があるでしょう。
まとめ:TikTok Shop活用でビジネス拡大のチャンスを掴もう
TikTok Shopは新規顧客獲得、低コスト参入、成長市場への早期参入など、ビジネス拡大の大きなチャンスを提供してくれる魅力的なプラットフォームです。海外での圧倒的な成長実績が証明するように、日本市場でも同様の成長が期待できます。
TikTok Shopの特徴を理解し、自社商品との親和性を見極めることで、新たな販路として大きな成果を上げることが可能です。特に視覚的な魅力を持つ商品を扱う事業者にとって、TikTok Shopは従来のECでは実現できなかった効果的な商品販売が可能になります。
一方で、継続的なコンテンツ制作や注文数増加への対応といった課題は存在しますが、専門的なサポートを活用することで、これらの課題は解決できます。
自社のビジネスモデルやターゲット層に合った運用方法を見極め、メリットとデメリットを十分に理解したうえで出店を検討してみてください。デメリットへの対策や運営体制の構築でお困りの際は、専門的なサポートサービスの活用をご検討いただくことをおすすめします。

 
  
  
  
  






















